晩飯は鶏肉のケチャップ煮のスープ状。
食べたのは色々あって1時を回ってた。
食事中。
尭志「(オレが)次作るときは、オレは凝(こ)ったもんつくるから」
鞆絵「・・・・(絶句)・・・・」
堕ちて行く自分が分かった。
でも、何とか堕ちないように努力した。
鞆絵「・・・・・凝った料理ってどんなん?」
尭志「ん~・・パスタ練ったりとか~」
鞆絵「・・・・・・・・・」
アカン。堕ちる。無理。我慢出来ひん。
鞆絵「そうやんな。鞆絵の料理なんて決まってるし、創作料理では無いし、想像出来る料理に味やもんな。凝ってない簡単に出来るのばっかや。」
尭志「ちゃうって、そういう意味じゃないって・・・・(慌てる)」
その後は自分の作った残りの料理を食べず、お茶漬けして。
鍋に残った、結構な量のケチャップ煮を躊躇いもなく流しに捨てた。
鞆絵の行為に怒り、戸惑い、自分の発言にフォローする尭志。
何であんな事したん?
そういう意味じゃない。
別に鞆絵の料理が凝ってないとかそんなん言ってない。
鞆絵の誤解や。
完全に悲しみ、堕ち、怒りの鞆絵
どうしてあんな事言ったん?
想ってなかったら言わんよな。
オレ「は」凝った料理作るからって・・・。
鞆絵が凝ってないっていう意味で言ったんじゃなくても、そう感じたし、不愉快や。
実際は、もう二度と料理なんてせーへん。自分の分は自分で作ればいい。そう想ってた。
ごめん・・・でも
そうじゃないねん、わかって。
鞆絵の誤解や。
いやや、分かりたくない。
何でいつも謝るのが遅いの?
全く料理が出来ひん人がアレを作ったら「凝ってるなぁ~」っていうやろ?
いつも、レトルトやインスタントしか食べてない人が作れば「頑張ったな」って。
そしたら、そんな発言出てこないはずや。
ローズマリー入れたの分かった?
野菜が型崩れしないように工夫して作ったの知ってる?
味が早く染み込むように工夫したの知ってる?
鶏肉がなるべく硬くならないように気をつけたの知ってる?
スープ状の濃度にしたんは、明日何にでも使えるようにあえてそうしたの知ってる?
更に、
今日は友達が家に来るから家中掃除機かけて掃除してトイレ掃除も洗面台も掃除して洗濯物もして尭志がいつ帰ってきてもいいように温めるだけでスグに出来るご飯を考えて作ってん。
凝った料理?
作ればいいやん。
自分の分だけ。
毎日。
・・・ごめん
でも違うねん!
尭志はそう言って、別の部屋に行った。
鞆絵は、もう、何もする気もなく、ベッドにもぐりこんだ。
付き合って初めて、二人別々の部屋で寝た夜。
悲しくても涙が出なかった。
普段ならおお泣きして、家を飛び出していたかもしれない。
でも、もう何もする気力も無かった。
尭志は、今、鞆絵との事でもめている場合ではない。
それは知っている。分かっている。
分かっているけど、キツかった。
尭志の性格からすれば、鞆絵が料理がドンドン上手くなるのが、自分とドンドン料理の腕が離れて行くのがイヤやったみたいで。
鞆絵も尭志も調理師。
料理についてはそれぞれに想うところがある。
だから、負け惜しみのような事を言ったんだろう。
自分はもっと、凝った料理を作って鞆絵を喜ばせてあげよう、驚かせてあげよう、と。
本当に、鞆絵の料理に対して言ったことではなかったと想う。
だけど、
自分なりに時間を使って、一生懸命作った料理を目の前で食べながら言われるのは、流石にキツかった。
言葉の裏返しまで考えてしまう鞆絵が悪いのかもしれない。
外で一生懸命働いて稼いでくれる尭志。
とても感謝している。
理不尽な事もあるだろうに、辛いこともあるだろうに。
それでも毎日、決められたシフト通りに働きに行く。
そして、鞆絵を、にゃんずを、家を守ってくれてる。
本当に有難い。
今の気持ちは最悪。
干したままの洗濯物。
ごった返しになっているシンク。
そして・・・・
もう料理はしたくない、と想う気持ち。
ありきたりなメニュー。
どこかのファミリーレストランで並んでいるようなメニュー。
工夫はしていたつもりだった。
尭志の舌に合うように、いつも甘めにしていた。
鬱状態の時でも、料理をしていた自分が、少しだけ偉いと想っていた。
そんなの吹っ飛んだ。
もう、どうでもいいや。
食べ物なんて買えばいいやん。
マニュアル通り作られた冷凍食品でもそれなりの味はしてるし。
凝りたいなら、凝ればいいやん。
勝手にしてくれ。
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